詳 細

2016-01-01

【新年のご挨拶】「爆買い」を超え、日中大交流に着目して(傳@達第八期)

  元日、好天に恵まれ、富士山巡りをしました。青空の下、冠雪富士が凛として雄々しく、夕方にはくれないに染まり、どの方角から見ても飽きることのない、目の前に迫る「不二之山」に大きなパワーを頂き、感激しました。
 
 ところが、携帯で撮った写真をその場で微信(WeChat)にアップするや、続々と「抗議」の書き込みが舞い込みました。「お前、それでも友達か」、「スモッグの中で暮らす人の気持ちに配慮しろ」、「恨みを買うようなことをするなよ」等々。確かに配慮が足りなかったとすぐ気が付き、お詫びに「案内するから今年来ておくれ」と言いますと、今度は「行く行く」、「富士山に一度登ってみたい」と喜びの声が返ってきました。
 
 富士山は世界遺産。それ以前からも中国人の「富士信仰」は厚いものがあります。中国人は誰もが「不到長城非好漢」と富士山に対しても同様の思いを抱いています。日本を観光しながら富士山に行かなかったなどとは口に出し難い有様です。しかし富士山は足の
便が良くありません。団体ツアーでは一か所の短時間滞在しかできず、個人ではなかなかアクセスが困難なので、富士山観光が自由に出来たらどれほど羨ましくて嬉しいかは、想像に難くありません。
 
 2015 年は中国人観光客が脚光を浴び続けた一年でした。年頭のご挨拶で「日中交流史において新しい一ページが開かれる可能性は極めて大きく、訪中日本人と訪日中国人の数の逆転という歴史的な転換が起こる」との予測は的中、さらに「ビザの蛇口さえ捻れば
400 万人突破も目前」との予測の方はは大変恥ずかしい思いをしました。
 
 NHK の「首都圏ネットワーク」特集番組「爆買いを超えて」では、小社可越取締役が観光コンサルタントの立場からコメントし、日本には発見すべき観光資源が豊富、その魅力を掘り起こし磨くべきだと力説しました。騒然たる現状に抗すべきもありませんが、精一杯の努力を続ける心算です。
 
 確かに、一人当たりの消費額は28万円と外国人の中で断トツに高く、年間合計1 兆4 千万円の売上げに関連業界が躍起になるのも理解できます。むしろより多くの中国人顧客の囲い込みを目指してどんどん働いてほしいくらいです。気懸かりはマスメディアやそのコメンテーター。もう少し着目点を高く持ってくれたらいいのですが。
 
 1 兆4 千万の消費額より500 万人来日の意義ははるかに大きいものです。日中交流史における新しい時代の幕開けという意味を見逃してはなりません。大げさかもしれませんが、『後漢書』に記載される奴国の朝賀使に漢の光武帝が「印綬を以て賜う」紀元57 年から見れば2 千年近く、日本各地の徐福伝説を考慮に入れたら2千2百年以上にも及ぶ中国大陸との交流の中で、これだけ多くの人、しかも庶民が自らの意思で日本列島に訪れるのは
「初めて」のことです。「初めて」をあえて強調したいのは、昨年がこれまでの最高ではなく、これがスタートだからです。
 
 持論ですが、これまで香港に訪れた年間4000 万人余の中国大陸観光客が観光資源の宝庫の日本にそのまま流れ来てもおかしくありません。問題は、中国人客をいかに誘致するかより、むしろ日本はそれを受け入れるか、受け入れられるかという心の準備と、キャパシティーの解決です。スタートとは、このことを指しています。議論を重ね認識を深めていくべきことがたくさんあります。ここで三点に絞って考えてみます。
 
 第一に、日中友好を確かなものに。民間の接触・交流が盛んになり、これまで政府主導の「日中友好」、「中日友好」スローガン型や友好団体限定の交流、或いは一部のメディアの「嫌中」、「嫌日」の吹聴から、真の民間対面交流に替わって行きます。自分の足で歩き、五感で感受し、観察して観察されることによって文化の違いやコミュニケーションのギャップが埋まり、相互理解が深まります。外部から刷り込まれた概念や先入観ではなく、自立し自
己の真の思考に根ざした交流への欲求は、揺るぎがたく安定的な友好関係につながります。
 
 第二に、日中コミュニケーションは普遍化。2003 年から提唱された観光立国。訪日外客数が2000 万人の大台にのるには中国大陸からの観光客600万人は不可欠と試算されており、今年はこの見込みを大きく上回るでしょう。7、8 百万人の中国人が日本にそれぞれ僅か一週間滞在しても、日本人と接触する回数は延べ何千万回にもなります。これらの第一線の日本人は「観光大使」、いわば日本の代表です。一人一人の対応は所属会社の、日本国の
イメージのアップにもダウンにもなります。企業は、ブランド構築の好機ととらえ、会社の方針点検と課題修正、社員教育により異文化コミュニケーションの力を培うと同時に、持続的かつ高度なPRが求められます。この二項目への取組みとその成否は企業業績に大きく関わってくるでしょう。
 
 第三に、観光ニーズの多様化と地域観光振興のチャンス。日本を訪れる中国の観光客は、大陸の沿海部、中間部、奥地から波を打って寄せて来ます。この勢いが続く間は地方都市や田舎の町にも自然に浸透して行くので、袖手傍観していても観光客は増え続けるでしょう。ただ、リピーターとなった沿海部の客はすでに定番コースには満足しないので、多彩なメニューを持ちコミュニケーション能力の高い地域を選別し始め、やがて企業の勝ち組と負け組
と同じようなケースが地方でも起こり、ここ二三年でその明暗が明確になると予測できます。転ばぬ先の杖。チャンスは準備のある人に訪れます。好調に推移する今こそ戦略立案・ビジョン構築と、実現のための確実なプランを整える必要があるでしょう。
 
 環境を犠牲にして高度成長に引き換えた中国。「山河破れて国あり」、景色だけではなく、清しい水、綺麗な空気、そして人々の穏やかささえも羨まれる贅沢品。経済は停滞しても美しい自然を取り戻した日本からは多くのことを学び、感受することができます。一方、少子高齢化の進む日本は海外旅行者が一億人を超える中国からより多くの観光客を迎え入れ、内需拡大に転換できます。日中コミュニケーションの核心は人的な交流であり、それが渓
流から大河になるよう微力を尽くすことを期して申年生まれの小社は、一回りして無事2 回目の申年を迎えることができました。富士山の朝暘、夕日、雪の頂き。青い大空に抱かれて過ぎ去った12 年間を顧み、支えてくださったすべての友人、そしてクライアントに感謝の念を深める、そんな2016 年の元旦、新しい年の幕開けでした。
 
 本年も変わらぬご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。