詳 細

2014-01-01

【新年のご挨拶】不畏浮雲遮望眼(傳@達第六期)

 

 橫看成嶺側成峰  橫より看れば嶺を成し 側よりすれば峰を成す

 

 遠近高低各不同  遠近 高低 各 同じからず

 不識廬山真面目  廬山の真面目を識らざるは

 只縁身在此山中  只だ身の此の山中に在るに縁る

 

 2013年の日中関係を顧みる時、宋代の詩人蘇軾の『題西林壁』(西林の壁に題す)を思い出す。同じ思いの人も多くいるのではと思う。

  88年秋の留学から既に四半世紀に及ぶ日本との関わり。80年代は日中関係にとって良き時代であった。教科書記述をめぐる外交問題があったものの、概ね友好的で健全に推移。多くの日本人が中国を訪れ、中国は「遠いアメリカより近い日本から学ぼう」と交流が活発化。その中に日本を見てみたい、日本語を覚えたいと休職して来日した自分がいた。時は恰もバブルの最頂点。『「NO」と言える日本』が出版され、日米はもとより中国(おそらく世界中)でも嵐の如き話題を呼び起こしていた。私が最初に購入した日本語の本でもあり、辞書を引きながら読んだのが今も印象に残る。

  願望と現実は別物。いつの間にか日中両国は互いに大好きな国同士という関係から転落しはじめた。好感度は最高80%台からじわじわと低下し今や20%、いや10%前後の状態であろうとマスコミが騒いでいる。政治問題が浮上すると必ずアンケートをとる手法とその設問の浅薄さは、メディア効果論の大家に師事した私にとっては受け入れ難いもので、それらの報道に一喜一憂することはなかったが、隣国同士では絶えず揉め事が起きそして深刻化することだけには危機感を強く抱いてきた。昨今の国交回復後もっとも厳しい状態であると言われる両国関係。その原因はボタンの掛け違いによるものというより、むしろ長期にわたる摩擦の蓄積がここまで来たと言えるかも知れない。一体、日中両国はどこへ向かおうとしているのか。横から看ても側面から看ても険しい。なかなか乗り越える道が見えてこないというのが多くの人々の正直な思いではないだろうか。

 日中交流促進を仕事とする私達の身近には、両国間で種々の業務に携わり、両国関係の動向に強い関心を寄せる人が多くその戸惑いは深刻。一方、このような日中関係下にあっても、着々と実績をあげているところもある。これらの企業·団体の有り方とその共通点をみると、日中関係及び中国マーケットの研究に多大な努力を払いその認識度は深い。その上しっかり練りあげた対応策、揺るぎない実行力が共通項として挙げられる。

  外国を交渉相手とするビジネス従事者には国際間の大勢への判断力が大切である。言語、文化、社会、政治、経済、立場、価値観などすべて自分の属す母体とは違う国々。錯綜し複雑な現象に身を置きながらそれぞれの本質を見抜かなければならない。もちろんこれは簡単なことではないが、難局に直面しても避けるのではなく、孫悟空のような「火眼金睛」を養わなければならない。問題発生の際は、すばやく事の性質を認識。深刻さ、経過期間、更なるリスク、改善策の有無などを分析。大勢が判明すればとるべき対応策も見えてくる。

  日本では「国有化」、中国では「島争」。これらの言葉の意味するところは領土問題である。収拾がもっとも難しい国際問題。しばらく様子を見よう、じっと我慢して耐えようなど、一部関係者の認識が甘きに過ぎたのではないかとさえ思われる。迷っている間に一年以上が経過。状況は悪化の一途をたどっている。この時間のロスは両国関係と国民感情の修復、さらにはビジネスへの影響を考えるとまさに痛恨の極みと言うべきであろう。

  大勢の判断と同様に重要なのは、対中ビジネスとそのマーケットに対しての分析である。両国が良好な関係時、和気藹々で千客万来。「いらっしゃいませ」だけでうまく対応できたかもしれない。政治上の対立が起きてしまうと事情はそれほど簡単ではなく、取り込む客層を選別する必要が生じてくる。一言で中国人と言っても地域、都市、年齢、世代、教育程度、収入によりその違いは大きいことを認識しなければならない。そして全ての中国人を顧客として取り込む必要はなく、その中の一部分にフォーカスした対策を立てれば良い。これにより突破口が見つかるのである。日中関係の善し悪しに左右されることなく、独自のマーケットを切り開き安定した軌道に舵を取れるかどうかは、力の試されるところであり、勝敗の分かれ道になる。

 太極拳の習得に「冬練三九、夏練三伏」の言葉があり、最も厳しい環境におかれてこそ速く上達ができるとの教えである。現今の日中関係は凍りつくような厳冬期にあるが、これをチャンスと捕えようではないかと私達が昨年来パートナー企業に唱え続けている。日中関係とともに業績が上下するのは、外部要因に依存し過ぎであり、対応策の過不足を点検し戦略再構築すれば、ブランドの強化や体力の向上、そして自信の形成に繋がる。対立時一辺倒になりがちなマスコミに左右されては自分自身を見失ってしまいかねず、今こそ変転極まりない世論のプレッシャーに動揺せず、メディア·リテラシーを意識した独自のマーケッティングを貫き、着々と前に進めば周辺との差別化になっていく。この一年間の状況下でも対中ビジネス成長した企業は、こうして体質改善を成し遂げ着実な実績を残した。日本車のマーケットでは失地回復、インバウンドでは中国人観光客は史上二番目の記録。統計が出てから動き出してはもう遅いかもしれない。

 この年末には両国関係にとってショッキングな出来事があった。視界不良の日中関係は一層混迷状態。しかし、騒ぎに巻き込まれてはならない。国家間の関係は重要であるが、それ以上に重要なのは国民同士の関係、個人間の関係ではないだろうか。グローバル·ヴィレッジが時代の潮流であり、日中間に根強い民間交流の伝統が存在している。雨に負けず、風に負けず。明日の太陽が必ず昇る。ここで新しい年を展望し、蘇軾と同じ唐宋八大家の一人 王安石の『飛来峰に登る』に心を馳せたい。

   飛来峰上千尋塔  飛来峰上 千尋の塔

   聞説鶏鳴見日昇  聞説らく(きくならく) 鶏鳴に日昇を見ると

   不畏浮雲遮望眼  浮雲の望眼を遮るを畏れざるは

   只縁身在最高層  只だ身の最高層に在るに縁る